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最高裁判所大法廷 昭和22年(れ)323号 判決 1948年6月30日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人上辻敏夫上告趣意第一點について。

被告人が西田久作から返還をうけた金百四十圓の金錢は、性質上代替物であるから、押收されていたとか又は封金で特別に保管されていたとかその他特定していることが明かでない限り、没收することができない場合に該當するものとしその價額を追徴することは毫も差支えないところである。從って、審理不盡、理由不備を主張する上告論旨は理由がない。

同第二點について。

憲法第三六條は、「公務員による拷問及び殘虐な刑罰は、絶對にこれを禁ずる」と規定しているが、ここにいわゆる「殘虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉體的苦痛を内容とする人道上殘酷と認められる刑罰を意味するのである。事実審の裁判官が、普通の刑を法律において許された範圍内で量定した場合において、それが被告人の側から觀て過重の刑であるとしても、これをもって直ちに所論のごとく憲法にいわゆる「殘虐な刑罰」と呼ぶことはできない。論旨は結局、事実審である原審の自由裁量權にのみ屬する刑の量定に關する不當を非難するに歸着するものであるから、上告適法の理由とはならない。

よって、裁判所法第一〇條第一號、刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見であって、真野裁判官の起草したものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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